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星界の紋章

幻色灯日記

星界の紋章。壮大なSFです。「星界シリーズ」の入門編、案内編でもあります。もっとも、この「紋章」三冊だけでも物語としては完成していますが。独特の文体が筆者を惹きつけます。

星界の紋章

八岐大蛇を国章に持つ一風変わった星間帝国。現在地球上になるような国々とはまったく趣を事にした国家形態を持つ帝国です。その名も「アーヴによる人類帝国」。アーヴとは遺伝子工学により人類が変化した人類の姿です。彼らのことを生体機械と罵る敵性国家も存在します。
「アーヴによる人類帝国」。それは遥か未来の日本人をルーツに持ちます。君が代が
「汝(なんじ)の治世が幸せな数千年であるようにわれらが主よ、治めつづけたまえ、今は小石であるものが時代を経て、あつまりて大いなる岩となり神さびたその側面に苔が生(は)える日まで」と意味する国歌ならば、そのルーツを持つ件の「アーヴによる人類帝国」の国歌も「星々の寿命の行く末を我らが見届けよう、それも未来永劫」という傲岸不遜な歌詞の国歌を持ちます。
宇宙こそが彼らアーヴの支配領域。彼らの故郷です。アーヴにとっての自然現象とは超新星の爆発レベルの出来事です。アーヴは地上世界へは降りません。興味がないのです。当然、その支配星域にも一切興味なし。地上世界、惑星の統治などは「麗しくないお仕事」として忌避します。地上世界の政体が神権国家であろうと民主制であろうと酋長姓であろうと統治下の惑星の政治形態には一切干渉しません。皇帝や星間国家に対する忠誠心も一切求めない。多文化共生ではなく、多文化尊重の精神に乗っ取った国家です。「アーヴによる人類帝国」はただ星系を支配し、星の住民の星間航行を禁止し交易権を独占する。そんな異色な国が「アーヴによる人類帝国」です。この世界では、彼らが人類世界の半分を支配しています。敵対する複数の星間国家は現在地球上にある国家をそのまま拡大したような、ちょうど「銀河英雄伝説」にあるような国家、(同盟)が相手です。

 そしてそんなアーヴによる人類帝国に侵略され、主人公の少年の運命は大きく捻じ曲がりました。成り行きで諸侯の爵位を得た主人公と帝国王女のボーイミーツガールの冒険物語。シリアスですがどこか間抜けでほのぼのした文体の物語り。それがこの「星界の紋章」です。最近のラノベよりも遥かにレベルが高いと思います。いや、比べることが失礼なレベルの傑作です。

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