小説

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幻色灯日記

掌編:末子相続

父が私たち兄弟に残した言葉がある。 嘘つきで気分屋で暴力を振るう最低親父だったが、こうして燭台の蝋燭に照らされた肌は青白く、獅子の咆哮かと思わせた声も細く細切れで。 吐く息、吸う息の間に何度も咳をしては骨の筋が見える胸を何度もたたく。 ああ...
幻色灯日記

掌編:天にも届く塔にて拾ったモノ

塔で女の子を拾った。 ボロを着て……いや、その砂で汚れた体に巻き付けて。 眼はブラウン。 ただ、その目のハイライトは消えている。 洗い、髪をまとめ、軽く化粧をすれば、もっと映えるだろう。 いや、俺の主観ではなく、こいつを見るほぼ全員がだ。 ...
幻色灯日記

掌編:とある練り物工場

練り物工場がある。 ちなみにこのかまぼこ屋の創業は寛永2年。実に歴史ある老舗だ。 そして、そこまで続く歴史の秘密。 パートのおばちゃんが、バイトの俺にこっそり教えてくれた。 「ここの竹輪はかまぼこ、そしてさつま揚げには『人魚の肉』を使うとる...
幻色灯日記

掌編:風変わりの家庭教師

俺がその仕事にありついたのは、お袋の一言だった。 「圭ちゃん。加藤さんの子供たちの勉強を見てあげる気はない?」 うん。 ピンと来たね。 家庭教師の誘いだ。 なぜすぐにそこに思いついたかって? なぁに、俺が二社ほど掛け持ちで家庭教師のバイトを...